谷 充展のブログ

ある時、不意に胸を衝く言葉たち。そういうものが、どこかに隠れている。そんな場所。

Good nightのひと言で。

恋人や友人や家族と会話というものは、ある意味でそこに会話があるのが当たり前というような根拠のない前提があって成り立っている。だから、普通に声をかけるし、会話をする。

 
翻って、街で行き交う全く見知らぬ人とは、そういうわけにはいかない。と言うか、彼らとの間には会話はないのが当たり前という前提がある。だから、普通は声もかけないし、かけられるとびっくりする場合もある。
 
公共の場では、意外と声をかけたりかけられたりする場面もあるが、こと近所のコインランドリーとでもなると、基本的には、洗濯物を放り込んでから取り出すまで口を開くことなく過ごす事になる。
 
昨晩も、普段通り乾燥機をかけに夜の閉店間際のコインランドリーに行った。本を読みながら時間を待っている間、ひとりの外国人が自分の洗濯物を取りに来た。彼は、持ってきたビニールの袋に自分の乾いた洗濯物を無造作に突っ込むと、"Good night."と僕に声をかけながら立ち去っていった。だから僕も、"Good night"と言い、彼がいい夢を見ることを祈った。
 
たったこれだけの会話だったけれど、彼が去ったあとに僕は彼に対して特別な感情を抱いた。恋人でもなければ友人でも家族でもなく、どこで何をしていてどうしてこの街に住んでいるのか、全く素性の知れない赤の他人に変わりはないのだけれど。
 
こういう言葉のやり取りに、コミュニケーションの本質を見たような気がした。見知らぬ相手に言葉を贈る、それを受け取って言葉を返す、そして相手を祝福し、相手に良きことを祈る。そうして、自分自身がとても豊かな気持ちになった事に気づき、とても大きなものをいただいたことを知る。
 
もちろん、恋人や友人や家族との会話でも、幸せを感じることはある。それとは全く異なる文脈における、昨晩感じたこと。
 
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クルミを割りながら
初冬の風に身を縮こまらせ、
 
ワインを飲みながら
鉛色の空を見る。
 
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初めて家でジントニックを作ってみた。なかなか良いものだ。プロの見よう見まねで自分で作ると、それっぽいものが出来るし、そういう気分も味わえる。それが一層美味しさを増す。
 
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ジンでフワフワしながら、明日のお米をセットして、今日も眠ろう。
 
 
Good night.